トロンプ・ルイユとは
トロンプ・ルイユとは、フランス語で「眼をだます」という意味があり、わかりやすく「だまし絵」や「トリックアート」と呼ばれることもあります。あたかも本物であるかのような錯覚を起こさせる写実的な絵画や、その技法のことを言います。絵画だけではなく、建築物の装飾としても用いられました。
トロンプ・ルイユの歴史
絵画では15世紀のフランドル地方において静物画に使用され、流行しました。
この技法がより大きく展開したのは、17世紀のイタリアです。特に、宮殿や教会などにおける天井画などの装飾に用いられました。この先駆けとなったのは、16世紀の画家コレッジョによって描かれたパルマのサン・ジョヴァンニ・エヴァンジェリスタ聖堂の天井画などです。そこには天から降下するキリストと天を見上げる十二使徒が描かれています。
このような仰視的表現は17世紀のバロック建築の装飾に受け継がれました。代表作として、パオロ・ヴェロネーゼによるバルバロ邸の装飾が挙げられます。天井部分にはギリシア・ローマ神話の登場人物が描かれており、遠近法とトロンプ・ルイユの手法が使われています。
20世紀以降においては、主にシュルレアリスムなどで使用され、現代においても騙し絵やトリックアートとして親しまれています。
トロンプ・ルイユの作品
トロンプ・ルイユのに分類される様式は様々で、例えば次のようなものが挙げられます。
1.壁や床に実際には存在しない扉や人物、風景などを描き、あたかも存在するかように見せた作品
イタリアのパルマ大聖堂の天井に描かれたコレッジョの「聖母被昇天」(1526年〜1530年頃)
2.リアリズムを極めた作品
フランドル画家コルネリス・ノルベルトゥス・ヘイスブレヒツの作品「手紙のトロンプルイユ」(1668年)
アメリカ画家ウィリアム・ハーネットの作品「After the Hunt」(1883年)
アメリカ画家ジョン・フレデリック・ピートーの作品「1865年の思い出」(1901年頃)
3.人体や野菜などを寄せ集めて人型に模した作品
イタリア画家ジュゼッペ・アルチンボルドの作品「春」(1573年)
浮世絵師の歌川国芳の作品「みかけハこハゐが とんだいゝ人だ」(寄せ絵)(1847年)
4.逆さまにしたり、向きを変えたりすると全く別のものに見える作品
デンマークの心理学者エドガー・ルビンが考案した多義図形「ルビンの壺」
下記の画像はルビンの壺の一例です。
まとめ
トロンプ・ルイユは古くから建築の装飾や絵画に用いられ、様々な作品が残されています。現代においても、それらの作品は意外性や目の錯覚を楽しむ芸術作品として鑑賞されています。また、トロンプ・ルイユは奥行きや壮大さを演出するために舞台のセットやテーマパークの建設などにも使われています。