フェルミ推定とは
フェルミ推定とは、限られた情報をもとに、論理的な推論を重ねておおよその数値を見積もる方法です。この手法は、イタリア出身の物理学者エンリコ・フェルミ(Enrico Fermi)にちなんで名付けられました。フェルミは非常に少ないデータから合理的な推定を行う能力に長けていたことで知られています。
フェルミ推定は、日常生活のさまざまな場面やビジネス、研究、コンサルティングなどで活用でき、「ざっくりとした数値を素早く算出する」際に役立ちます。
フェルミ推定の基本手順
1.前提条件を整理する
フェルミ推定を解く際は、曖昧な前提条件を明確にします。例えば、「カップラーメンの売り上げはいくらか」という問題では日本全国なのか、特定の地域なのかという規模の大きさや、1日の売り上げなのか1年間の売り上げなのかという期間の条件などがあります。このように定義付を行うことで求めるべき数字が明確になっていきます。
2.要素に分解して考察を具体化する
「日本にピアノの調律師は何人いるか?」という例題をもとに考えてみます。以下はこの時の考察手順の一例です。
- ピアノがある家庭の割合
- 年間のピアノの調律頻度
- 年間の調律師一人当たりの作業量
- ピアノの調律頻度と調律師一人当たりの作業量から調律師の人数を算出
3.計算をする
考察手順が決まったら実際に計算をします。
- 日本の人口は約1億2000万人。
1.ピアノがある家庭の割合
- すべての家庭がピアノを持っているわけではない。
- 日本の世帯数は約5000万世帯。
- そのうち、ピアノを所有しているのは10世帯に1つ(10%)と仮定すると、500万世帯がピアノを持っている。
2.年間のピアノの調律頻度
- 一般的にピアノは年に1回調律すると仮定。
- つまり、年間の調律の需要は500万件。
3.年間の調律師1人あたりの作業量
- 1回の調律にかかる時間は半日(4時間)と仮定。
- 1日に2台調律できるとする。
- 1年で250日働くとすると、1人の調律師が調律できるピアノの数は2台 × 250日 = 500台。
4.総数を求める
- 日本全体で調律が必要なピアノは500万台。
- 1人の調律師が対応できるのは500台なので、500万 ÷ 500 = 1万人。
よって、日本には約1万人のピアノ調律師がいると推定できます。
4.確実性を検証する
最後に、求めた数値が妥当なものかどうか確かめます。上記の例題の場合、日本の人口の半分以上を占めていたりすると、算出方法に誤りがある可能性が高いです。
フェルミ推定の活用例
1. ビジネスやマーケティング
市場規模の試算
例:「日本で毎日何杯のコーヒーが飲まれているか?」
売上の見積もり
例:「新商品の潜在的な顧客数は?」
2. コンサルティングや面接試験
コンサルティング企業の面接では、思考力を評価するためにフェルミ推定がよく出題されます。
例:「東京には何枚のマンホールの蓋があるか?」
3. 科学・エンジニアリング
大まかな計算で設計の方向性を決定します。
例:「地球上のすべての人が同時にジャンプしたら何が起こるか?」
4. 日常生活
買い物の予算計算や旅行の費用見積もりなどにも応用できます。
まとめ
フェルミ推定は、限られた情報から論理的な推論を重ねて数値を見積もる方法です。この手法を身につけることで、論理的思考力が向上し、不確実な状況でも素早く合理的な判断を下せるようになります。