アール・ヌーヴォーとアール・デコ

「アール・ヌーヴォー」と「アール・デコ」とは、1880年代から1930年代にかけて流行、発展した芸術運動のことで、建築や工芸品、グラフィックデザインなど多岐にわたる分野で用いられました。似たような言葉ですが、それぞれのデザイン様式は大きく異なります。

目次

アール・ヌーヴォーについて

アール・ヌーヴォーとは

「アール・ヌーヴォー」とは1880年代から1910年代にかけてヨーロッパを中心に発展した芸術運動、またそのデザイン様式のことを指します。フランス語で「新しい芸術」を意味します。建築、工芸品、グラフィックデザインなど多岐にわたる分野で発展しました。

アール・ヌーヴォーの特徴

アール・ヌーヴォーの作品は、花や植物などの有機物をモチーフにしたものが多く、自然の美しさを表現したり、自由な曲線を用いて装飾的に表現されています。

アール・ヌーヴォの歴史

アール・ヌーヴォーに大きな影響を与えたのは1880年代のイギリスで起こったアーツ・アンド・クラフツ運動です。当時、産業革命によって世の中には大量生産された安くて質の悪い商品があふれていました。アーツ・アンド・クラフツ運動ではこのような状況を批判し、生活の中に装飾性の高い芸術を取り入れようとしました。

第一次世界大戦を機に、装飾性が高くコストのかかるアール・ヌーヴォーは廃れ、直線的で大量生産ができるアール・デコへと変化していきます。

20世紀初めに最高潮を迎えた後、衰退したアール・ヌーヴォーですが、1960年代にアメリカで再評価され、企画展の開催や美術館の開館などでアール・ヌーヴォーの名前や価値が広く知られました。

アール・ヌーヴォーの代表的なものにサグラダ・ファミリアを設計したアントニ・ガウディの建築や曲線的なデザインと女性の絵が印象的なアルフォンス・ミュシャの作品などがあります。

アルフォンス・ミュシャ , Art Renewal Center , パブリック・ドメイン
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2472127による

アール・デコについて

アール・デコとは

「アール・デコ」とは1910年代から1930年代にかけてヨーロッパやアメリカで発展した芸術運動、またそのデザイン様式のことを指します。フランス語で「装飾芸術」を意味します。建築、工芸品、グラフィックデザイン、ファッションなど多岐にわたる分野で発展しました。

アール・デコの特徴

アール・デコの作品は、幾何学図形など直線的で実用的なデザインのものが多く、原色の対比による表現も特徴的です。アール・デコのデザイン様式は様々で、キュビズムやバウハウスのスタイル、古代エジプトの装飾、アステカ文化の装飾、日本や中国などの東洋美術などから影響を受けているとされています。

アール・デコの歴史

アール・デコは、1925年にパリで開催された「アール・デコラティブ」という展覧会が発祥とされていますが、パリではそれほど流行しませんでした。第一次世界大戦の戦勝国であるアメリカで大きく発展します。

富裕層向けの一点ものが多かったアール・ヌーヴォーの作品に対し、アール・デコは一点ものも多かったものの大量生産とデザインの調和を図ろうとしたものでした。しかし、装飾ではなく機能を重視する機能的モダニズムの考えに合わないことや第二次世界大戦の勃発による都市文化の衰退によってアール・デコの流行は去り、過去の悪趣味な装飾として捉えられるようになりました。

従来の美術史やデザイン誌では全く評価されませんでしたが、1966年にパリで開催された「25年代展」以降、モダンデザイン批判やポスト・モダニズムの流れの中で再評価されるようになりました。

アール・デコの代表的な建築にエンパイア・ステート・ビル、クライスラー・ビル、ロックフェラーセンターなどがあります。どれも直線的なフォルムが特徴のニューヨークマンハッタンの高層ビルです。

クライスラー・ビル , キャロル・M・ハイスミス , パブリック・ドメイン
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11879969による

まとめ

アール・ヌーヴォーとアール・デコの違いをまとめるとこうなります。

アール・ヌーヴォ(フランス語: Art nouveau)
意味:Art(芸術)+nouveau(新しい)
時代:1880年代〜1910年代
場所:ヨーロッパ
特徴:花や植物などの自然の美しさを表現した有機的なモチーフや自由曲線の組み合わせによる装飾
分野:建築・工芸品・グラフィックデザインなど多岐にわたる

アール・デコ(フランス語:Art Déco)
意味:Art(芸術)+Déco(装飾)
時代:1910年代〜1930年代
場所:ヨーロッパ・アメリカ
特徴:幾何学図形をモチーフにしたデザインや原色の対比による装飾
分野:建築・工芸品・グラフィックデザイン・ファッションなど多岐にわたる

アール・ヌーヴォーとアール・デコはそれぞれの時代と文化の中で独自のスタイルを作り上げてきました。一度は衰退するものの、現代においても多くの人々に受け入れられ、影響を与え続けています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次